仮2

you regend!

童話 なんにみえよか 1. 

 手のひらを上にして、「どうぞ」のポーズをすると、手のひらからは、みるみるどんぐりのようなものがあふれ出し、「つばさのないとり」の目の前に、次から次へとこぼれ落ちた。 

「さあ、しあわせの種よ。」 

 まるで女王様のような口調で、少しおどけて言った。そのからだは、ぼんやりと光っている。 

「そろそろ、みはらし台でお願いできないかな?」 

 しあわせの種を、くちばしで器用にひろいながら、「つばさのないとり」は少しおこっているようだ。 

「いやよ、もう何も見たくないし、何も聞きたくないの。花もかれてばっかりだし、もういや。」 

 そう言いながら、ぷいっと後ろを向いてしまった。 

 月は、すべてを見て、聞いている。みんなの良いことも悪いこともすべて。 

「種を持って、早く行ってちょうだい。」 

「つばさのないとり」は、ふうっと、ため息をついて、散らばったしあわせの種をひろい集めている。 

 月の光が出てる時、月はしあわせの種をみんなにまいている。月の光を浴びることで、その種は心に根付く。良いことをたくさんすれば、やがて芽を出して花がさく。しあわせの花には、しあわせがどんどん寄ってくる。でも、あまり悪いことばかりしていると、さかないでかれてしまうのだ。 

 月の子は、そんなかれてしまう花を、ずっと見てきた。そしてついに、もう見たくないと言ったきり、部屋にこもってしまったのだ。 

「つばさのないとり」は、しかたなくみはらし台に立ち、くちばしで種をくわえ、右へ左へばらまき出した。 

「さあよ、さあよ。つきのかげを、ひとめみよ。なんにみえよか、なんにみえよか。さあよ、さあよ。」 

 そんな月の歌をうたいながら。 

「トギス、まだ月んこは、やんねのか?」 

 手伝いをしていたもう一羽の「つばさのないとり」が、心配そうに聞いてきた。 

「ああ、もう一ヶ月くらいになるかな、ホトよ。」 

 トギスは力なく答えた。 

 月の子が種をまかないと、月の姿はかくれてばかり。トギスのまく種は、流れ星となって見た人の心に根付くだけなのだ。