仮2

you regend!

童話 なんにみえよか 3. 

  

 パンジャの部屋から、月の階段を下りていくと、そこには草原が広がっている。まだ緑色のすすきの中、百二十センチの月の子は、二メートルのパンジャと歩いている。遠くに は、小高いおかも見える。 

 月の子は、いつになくそわそわして、 

「ねえ、パンジャ。あのね、ちょっとお願いがあるの。」 

 と、少し照れながら聞いた。 

「あのね、久しぶりにね、その、かたにね、私を乗せてほしいの。かた車をさ。べ、別にどうしてもと言うわけじゃないけど。まあ、本当はもっと小さい子にするもんだし…。」 

 そう言って、少しほほを赤らめた。 

 パンジャは、親指を立てて、うんうんとうなづき、しゃがみこんだ。そして、手招きをしてかたを指さした。 

 月の子は、「やったあ」と小さな声で言って、パンジャのかたに足をかけた。 

「い、いいよ。パンジャ。」 

 パンジャは、ゆっくりと立ち上がった。     

 あっという間に、月の子の目線は、二メートルの大巨人になった。 

「はは、気持ちいい。」 

 パンジャは、少し歩きながら、わざとこっちにふらふら、あっちにふらふらする。 

「わっ、わっ、ははは。パ、パンジャ、あれもやって、あれも。」 

 月の子は知っているのだ。パンジャかた車のメインイベントを。 

 おもむろにパンジャは、口を大きく開け、息をすいこみ始めた。すると、パンジャの背が、ぐ、ぐ、ぐ、とのびた。さらにすうと、またまたパンジャの背がのびて、周りの木よりもすっかり高くなった。 

 月の子は、パンジャの頭にしがみつきながら、すごいすごい、とはしゃいでいる。 

 パンジャは、ほほを大きくふくらませ、赤い顔をしていたが、ぷふう〜と、息を一気にはき出すと、背もみるみるちぢみ、あっという間に元の二メートルにもどった。 

「は〜、ありがとう、パンジャ。」 

 そう言って月の子は、片手を水平にし、手のこうに、もう片手を垂直に当てて、ゆっくり上げた。(ありがとう) 

 パンジャは、おやすいごようですと、胸に右手を当て軽く頭を下げた。 

     

「さあよ、さあよ。つきさかげを、ひとめみい。なにさみえっが、なにさみえっが。さあ 

よ、さあよ。 

 それそれ、そ〜れ、おっとっと。こっちにいっぱいおどすたっけな。あどはこっちさまいで。あれっ、こっちさまぐなが、ねぐなった…。」 

 バツのわるい顔をして、となりにいるトギスと目が合ったが、ホトは笑ってごまかした。 

「とごろでよ、さっき種をもらいさ行ったら、今日の月んこは、きんなより、たしかにうすぐ感じだな。」 

「やはりな。」 

「どげんごどだ?」 

 ホトは、その返事を聞くのが少しこわく感じた。 

 トギスは、少し間を空けてから言った。 

「いずれ、消えるということだろう。」