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職業 介護福祉士 

祭壇の決まり事があったのかも知れない。

十年くらい前に、山の調査をしていた時の話ですが、

まあたいてい、人里離れた山に入るんですが、もう何十年も誰も入ってない山とかなんです。で、その日も地元のおじいちゃんが若い時に入ったきり、なんて言われまして。

 

しっかりコンパスと地図、水など一式バックに詰めて山に入って行ったんです。

まあ、順調に調査を進めていって、天気も良く、この山も良いところだなあなどと呑気に思っていました。午後になって、三時くらいにそろそろ帰り道に入らないと遅くなるなと思っていたら、ちょうどちょっとした広場のような開けた場所に出たんです。

 

学校の体育館くらいの広場で、中央付近に何だかありまして近づいてみると、中央には人工的に削って丸くしたようなボーリング玉大の石がゴロゴロしてました。何かを祀っていたような祭壇ですね、小さな。

背丈ほどの木製の鳥居が朽ちて倒れていて、もう半分土に還ってまして。まあでもそういうのって、たまに山に入っていると見かけるので、ここも昔は人が入っていていい山だったんだろうなって思って。

でまあ、そろそろ帰ろうってなったんですが、なんか変なんです。

来た道を帰ってると思っているんですが、全然違うところに出てくるんです。なぜかその広場にまた出てくるんです。で、あれって思っておかしいなと。少し道を変えて行くと、また広場の反対側とかに回って出てきちゃうんです。

出れないんですよ、広場から。

 

突然なぜか迷ってしまって、迷ったと自覚した途端にいきなり、辺りが暗くなってきて、上空では風がゴーゴーいってて、さっきまで雲なかったのに突然荒れてきまして、風で木の葉がすごい舞い上がっていて、なんだかピンポイントですごい荒れている感じなんですよ。

で、目の前の大木の幹が、笑っている顔のように見えて、目と口があってさすがに怖くなってきてコンパスを見たんです、地図と。もうまっすぐ最短で山から出ようと思って見たら、コンパスがぐるんぐるんしてて使えないんですよ。

太陽も消えて、歩いても歩いてもまたその広場に出てきちゃうみたいになってて、たぶんもう30分くらいそこで迷って疲れてきてもう分からんとなって、目の前の広場の壊れた祭壇に行って、何気に手を合わせてお願いしたんですよ。

 

「山の調査に来ましたが、もう帰ります。だから道を教えてください。お願いします」と。すると、空がそれまでめちゃくちゃ暗かったのに、一気に明るくなって風も止んだんですよ。コンパスもピタッと止まって。

すると、さっきもそこから行ってダメだったはずの道を行ったら、今度はスッとそこから抜け出せたんです。少し暗くはなりましたが、無事下山致しました。

 

後日、そこの広場あたりの所有者を調べて、昔の更正図を見てみたらその広場のところは誰の土地でもなかったんですね。存在はしてて囲ってあるけど、空地になってて面積0㎡になってたんですよ。

そういう不思議な場所は昔の山にはたくさんありました。